機関紙「銀杏」特集

No.68 2021年8月号


特集:私の心のふるさと その2

皆様の心のふるさとはどこですか?そうお尋ねしたところ、たくさんの原稿が寄せられました。前号に引き続き、懐かしいたくさんの原稿が寄せられました。前号に引き続き、懐かしい記憶、心に残る思い出をご紹介します。


初めて「ふるさと」と感じた秋田県岩城町

岩城祐子会長

 行政官だった父の任地を転々として育ったので、ふるさとの味を知りません。祖父母からは「女は嫁いだ家がお前様の家じゃで、生まれた家のことなど、なあんも知らんでええんじゃわいの」と言われて育ちました。結婚して昭和22年に長男を、24年に次男を産みましたが、この次男を生後1ヶ月で喪い、埋葬のために初めて訪れたのが秋田県岩城町でした。傷心のうちに愛児を土に還す際に眺めた、松の緑と海の波頭の白さが心に深く焼きつき「ここが私のふるさとになる土地だ」と深く感動したのを今でも覚えています。ですから、岩城町が私のふるさとです。町のためにロブスターの養殖や、にんじんジャムなどの事業を興したことを、懐かしく思い出します。

ロブスター養殖事業に奔走していたころ(前列左端)。カナダ・ケベック州立水産試験場にて。



家を建て、子どもを育て•••。奈良で過ごした日々

八木様

奈良を代表する東大寺大仏殿。

 芦屋の生まれですが、心のふるさとは奈良です。奈良は、結婚して初めて土地を買い、家を建てた場所。京都のような派手さはないけれど、訪れた人の心を穏やかにしてくれるあたたかさがある土地です。ここで子どもを2人育てて、歌やダンスのお稽古にも通って、お友達がたくさんできました。

 主人が定年退職してからは、「西国33ケ所巡礼」を2年ほどかけてめぐりました。奈良は大阪や京都へも電車一本でいける便利な場所。ですから日帰りできることもありましたが、中には奥深い山の中のお寺もあって、そういう時にはたいてい1泊して参拝しました。御朱印帳と、印を捺していただく掛け軸を必ず持ってね。事前に見どころやおすすめの店、名物などをいろいろ調べて出かけるんです。

 巡礼の先々でお会いした方とは同じ目的ですからすぐにお友達になり、話が弾んでとても楽しかった。今でも部屋にそのときの掛け軸を飾っていて、当時を思い出しています。

御朱印を捺してもらった掛け軸は今も部屋の壁に。



戦前の満州での満ち足りた子ども時代

寺田様

 芦屋の生まれですが、心のふるさとは奈良です。奈良は、結婚して初めて土地を買い、家を建てた場所。京都のような派手さはないけれど、訪れた人の心を穏やかにしてくれるあたたかさがある土地です。ここで子どもを2人育てて、歌やダンスのお稽古にも通って、お友達がたくさんできました。

 主人が定年退職してからは、「西国33ケ所巡礼」を2年ほどかけてめぐりました。奈良は大阪や京都へも電車一本でいける便利な場所。ですから日帰りできることもありましたが、中には奥深い山の中のお寺もあって、そういう時にはたいてい1泊して参拝しました。御朱印帳と、印を捺していただく掛け軸を必ず持ってね。事前に見どころやおすすめの店、名物などをいろいろ調べて出かけるんです。

 巡礼の先々でお会いした方とは同じ目的ですからすぐにお友達になり、話が弾んでとても楽しかった。今でも部屋にそのときの掛け軸を飾っていて、当時を思い出しています。

御朱印を捺してもらった掛け軸は今も部屋の壁に。

御朱印を捺してもらった掛け軸は今も部屋の壁に。



茅ヶ崎の海岸沿いで海と松に囲まれて

小川様

 松の巨木が多い茅ヶ崎東海岸。自転車を三角乗りして転んだ砂地のデコボコ坂道。バラ線囲いのさつまいも畑。麦踏み。イナゴ捕り。駅に出迎えた父から毎夕出される算数の問題に、半泣きの帰り道。夏休みの早朝、地引き網の手伝いをしてもらった小魚。ツバナの白く甘い穂。ツツジの花の蜜。枯れ松葉で焼いたゴジゴジホカホカのさつまいも。父が持ち帰った青い大房のバナナは、黄色くなるまでと母が米びつに埋めました。「1本だけ食べていい?」と弟が毎日聞いて、結局全部食べてしまった知った時の悔しさ。

 海、松、焼き魚の匂い。つつましくも楽しかった日々ー。もう帰ることのない、私の大切な心のふるさとです。



日暮れまで遊んだ自然豊かな札幌の地

八木様

 ふるさとは

懐かし四つ葉のクローバーを今は育てています。